2012年4月21日土曜日

【ガリバー、デビアス】 - ダイヤモンドの陰影


デビアス(デ・ビアス)とは、一介のダイヤモンド販売業者です。ただし、その規模は超巨大で、まさにダイヤモンド界のガリバーとでも形容するしかありません。なにしろ、国家でもない、一企業がダイヤモンドの流通の大半を握っているのですから。そして、その経済力は一つの国家と渡り合い、勝利したほどです。このページでは、ダイヤモンドを語る上でどうしても欠かせない、デビアス社について話しましょう。

デビアス社の創業秘話

ダイヤモンドの一大転換期とは、18世紀半ばになります。この当時、インドはもちろんブラジルのダイヤモンド資源に陰りが見え始めていました。しかし、南アフリカに大規模なダイヤモンド鉱山が発見されたのです。

莫大な埋蔵量に裏打ちされた南アフリカのダイヤの生産・発掘量は伸び続けました。しかし、それに反比例して、増産されることによる希少性の低下…つまり価値も下がり続けたのです。

業者は減益をカバーするために、より掘削量を上げ、そのことによる価値の低下が起こり、また掘削量を上げ…という悪循環が起こり始めました。この悪循環に歯止めをかけようとしたユダヤ人、セシル・ローズが創業したのがデビアス社なのです。


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躍進するデビアス

さて、ダイヤモンドの価格を安定させるにはどうすればいいか? デビアス社が取った行動は全てのダイヤモンドの原石を集約する…つまり独占でした。

実質次々と鉱山の買収を行い、当時は全流通量の90%をデビアス社所有の鉱山が独占していたのです。しかし、その後ダイヤモンドの歴史を変えるほどの鉱山〜プレミア鉱山が発見されました。

その生産高はプレミア一箇所だけでデビアス社の全鉱山並みであり、その他にも発見される大型鉱脈により、90%あった割合も、40%台にまで低下しました。しかし、全生産量の40%というのは価格統制・出荷統制に対して充分すぎる割合であり、デビアス社を抜きにしてはダイヤモンド流通は語れない存在となったのです。

デビアス社の戦略

全ての鉱山を押さえる事は不可能と知ったデビアス社ですが、その影響力・資金力を元手にして、ダイヤモンドの生産者による連合(DPA=ダイヤモンド生産者組合)を作らせました。


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そこで、多すぎる生産は価格の下落を招くとして、生産量の調整についても申し合わせました。さらに生産されたダイヤは全てDTC(ダイヤモンド貿易会社)が一括で買い上げ、DTCで買い上げたダイヤはまとめてCSO(中央販売機構)という組織によって販売されるという、強力かつ強大なシステムを作り上げたのです。

つまり、ダイヤモンドが欲しければ、(または売りたければ)どうしてもデビアス社を通す仕組みになっているのです。

サイトホルダーとは

デビアス社が原石を販売するときに使う方法が「サイト」というものです。デビアス社が認定した資格(サイトホルダー)を持つものだけがこのサイトに参加できるのですが、その販売方法はオールオアナッシング。

紙袋に入れられた複数の原石を、全て買って帰るか、または全て置いて帰るかという選択肢しかないのです。しかも、置いて帰ってもかまわないはずですが、ひんぱんに購入をこばんでいれば、サイトそのものの参加資格を失うこともありえます。

デビアス社の統制がもたらすもの

消費者のほうからすれば、デビアスの独占はけしからん、ということになるでしょう。しかし、デビアス社があるからこそダイヤモンドには価値があるともいえるのです。


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一万円札で例えてみましょう。一万円はそれ自体紙切れです。原価も20円程度のものらしいです。しかし、一万円札が一万円の価値がある、と日本政府が保証しているからこそ、どこに行っても一万円札の価値があるのです。

もし、デビアス社が統制と保障を放棄したら、ダイヤモンドは現在の価値・価格を維持するのは至難の業でしょう。生産調整を行わなければ今の生産技術によって、倍以上の増産が可能であるとされていますが、その先にあるものはダイヤモンド市場の暴落です。

合成することもでき、その埋蔵量も豊富なはずのダイヤモンドが、今でも希少性のある宝石というイメージであるのは、デビアス社無しには考えられないこと、といえるでしょう。

デビアス社の広告戦略

「ダイヤモンドは永遠の輝き(Diamond is Forever)」「婚約指輪は給料3か月分です」「スゥイートテン・ダイヤモンド」などなど…これらはすべて、デビアス社の打ち出した広告です。日本人ですらよく知っている内容ですね。

こうした卓越した広告戦略はデビアス社の得意とするところで、特に、ダイヤモンドは永遠の輝きというキャッチコピーは、永い人類の歴史の中で最高の成功例とさえ称えられます。


デビアス社のこれから

イスラエルという国家と販売権争いを行い、勝ったことさえあるデビアス社。これから先、多少のシェア増減があったにしても、この巨人が倒れる事はまずないでしょう。

現在では、主にダイヤモンドの原石の統制・販売を重視してきたこれまでの方法から、直接販売のほうに重点をシフトしてきました。

「デビアス」ブランドのジュエリーショップも開店し、これからもダイヤモンドと共に歩み続けることになると思います。



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